第4回 これからの音楽教育を考える会 レポート

6月23日(金)にオンライン(Zoom)で開催された「これからの音楽教育を考える会」第4回のレポートをお届けします。

◆ これからの音楽教育を考える会 第4回
音楽教育は、学校・地域に何ができるか?「学校クラスコンサートと地域コミュニティ」
開催日程:2023年6月23日(金)
会場:オンライン
主催:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)Open Piano Project
ゲストスピーカー:海野春絵さん(1999特級グランプリ・指導会員)/海野幹雄さん(チェリスト)
ファシリテーター:川野辺雪菜
テーマ:「学校クラスコンサートと地域コミュニティ」
前回の企画

地域と連携した将来の音楽教育について話し合うオンライン勉強会「これからの音楽教育を考える会Vol.4」を6月23日(金)に開催しました。地域の音楽活動を活性化したいと考える熱意ある20名の参加者たちが、ピアノ指導者、アーティスト、公共ホール担当者と、垣根を超えて情報や意見を共有する場となりました。

2023年度初回の今回は、再び「学校クラスコンサート」を主な事例として、その取り組みやプログラム作りの意図、最近の動向を紹介、今後への課題を提起した後、18年間にわたり学校クラスコンサートに出演し続けてくださっている海野春絵さんと海野幹雄さんをゲストスピーカーとして迎え、アーティスト側からの貴重な視点で経験談をお話いただきました。

後半は少人数のグループに分かれてディスカッションが行われ、地域へのアウトリーチ活動への経験豊富なベテランとこれから活動していきたいという熱意を持つ方、異なる地域の方の間で、経験談や問題意識が共有されました。

ゲスト:海野幹雄さん(チェリスト)&海野春絵さん(ピアニスト/1999グランプリ)

ゲストスピーカーとして登壇した海野幹雄さん、春絵さんは、ソロ、アンサンブル、オーケストラなどの活動の傍ら、学校クラスコンサート創始期から地元の神奈川県を中心に関わってくださっています。また(一財)地域創造の公共ホール音楽活性化事業、オーケストラや自治体の取り組みによる幼稚園・小学校・中学校・支援学級・被災地などへのアウトリーチ活動の経験も豊富で、長年の経験からの考えの変化、活動の拡がりについて、具体的な例を交えてお話くださいました。

その知見が買われ、近年では地方の公共ホールのアウトリーチ事業における派遣アーティストのオーディション審査や、講師として若手演奏家へアウトリーチを指南する活動も時おり行なわれています。今回も、全体の時間の中の演奏とトークの割合やプログラムの組み方、子どもたちの様子をよく見て常に修正を加えながら行っていることなど、実施者ならではのコツもお話くださり、参加者は大きくうなずきながら聞き入っていました。

若い頃は演奏者としての活動ばかりに興味が行きがちでしたが、20年程のアウトリーチ経験の積み重ねは、今や自分というアーティストを形作る一つであり、もはやなくてはならないものになっていると感じています。

また子どもが生まれてからは、自分の子どもが学校でどういうものを聴いて経験するのだろうということを考えるようになり、ああ、自分はなんて素晴らしいことをしてきたのだろう、と思うに至りました。そこで、自ら子どもの学校の校長先生へお話して、今度初めて自分の息子のクラスで学校クラスコンサートを実施できることとなりました。

グループ・ディスカッション

後半はグループごとに話したいテーマを持ち寄り、活動における資金繰り、ボランティアマネジメント、ストリートピアノやまちづくりからのコミュニティ連携、支援学級などのインクルーシブ教育など、地域の音楽活動の現場が接する課題についても幅広くディスカッションが行われました。

第4回の参加申込者分布
第4回参加者の参加目的
ディスカッションより
  • 継続させるためには、学校に出入りし続けること、学校・保護者側に「きてほしい」と思われるコミュニケーションが大切。
  • 「演奏がボランティア」にならない、「一度限り」にならないための、資金繰り、仲間集めが課題。
  • 支援学級、不登校児童、障碍児教育の場など、演奏への反応がよいことが多く、もっとインクルーシブな取り組みができないか。
  • ストリートピアノ、アマチュア活動が盛んなのは、みんな「弾きたい」という意欲が強いことの表れ。その意欲を生かした企画ができないか。
  • 地域の自治体、議員、学校の中でも校長先生、教頭先生、音楽の先生と、温度差が様々。一つの方法でうまく行かなくても、別のルートを試す価値はある。
  • 自治体により抱えている学校の規模や教育予算に差があり、同じように持ち掛けても動ける所と動けない所がある。直接知り合いのいる学校は話が早い。
  • 自主事業としてやっている所もあるので、地域の行政、文化振興財団、文化事業に取り組む法人に働きかけると、支援を得られることもある。
  • トップダウンで話が進みやすくなる部分と、逆に現場でやりにくくなる部分がある。人を介しても伝わりやすい資料と計画性、見通しを持つことが必要。
 
参加者の感想より
  • ピアノを始め楽器経験に関わらず、クラシック鑑賞を楽しめる人の裾野を広げたいという思いを持っていた中、実際にそのような活動をされている海野先生始め、ご参加の先生方のお話を伺え、有意義でした。
  • アウトリーチ活動は未だボランティア的な要素が強く、アーティストにとっては仕事ベースで引き受けるのはなかなか難しいところもあると思いますが、このギャップを上手く埋めていく方法が見つかればよいなと思います。

次回は2023年10月ごろの開催予定です。より広い視点で、そしてより具体的な視点で、民間の音楽教育関係者ができることへの議論を深めるため、様々なバックグラウンド、経験をお持ちの方のご参加を歓迎しております。

第1回レポート
第2回レポート
第3回レポート

学校クラスコンサート
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