これからの音楽教育を考える会 第1回

第4弾は、6月23日(木)にオンライン(Zoom)で開催されたこれからの音楽教育を考える会 Vol.1のレポートをお送りします。

当日の様子

◆ これからの音楽教育を考える会 Vol.1
音楽教育は、学校・地域に何ができるか?
~学校クラスコンサートから考える、教育のこれから~
開催日程:2022年6月23日(木)
会場:オンライン
主催:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)Open Piano Project
ゲストスピーカー:井上朗子先生(岸和田ちきりステーション代表)、坂本夏樹先生(おとみっく主宰)
ファシリテーター:川野辺雪菜(本部事務局)

「これからの音楽教育を考える会」は、学校クラスコンサートや独自のアウトリーチ事業へのご出演・コーディネートのご経験がある方や、官民連携教育にご関心をお持ちの方々を集め、これからの教育に民間の音楽人材が貢献していく方法を学び合う場を作りたいという想いから開催します。
学校クラスコンサートは、「クラスごとの少人数で、演奏やお話を楽器の周りで間近で見聴きする」スタイルに重きを置いて長年ピティナが主催してきた事業ですが、学校教育のニーズが変化する中、学校が抱える様々な課題に対して、ピティナが民間教育団体として提供できるコンテンツを新たに開発していく必要があります。また、アウトリーチ活動は、学校・地域側を説得できる教育的価値や社会的意義、アーティスト側の学びや繋がりなど、双方の効果を意識して取り組むことが重要です。

初回は、学校クラスコンサートを長年開催してきた井上朗子先生と、おとみっく主宰の坂本夏樹先生をお招きし、学校クラスコンサートの運営実態をはじめ、学校教育における民間の音楽教育団体としての役割・意義について話し合いました。

井上先生の学校クラスコンサート
井上先生の学校クラスコンサート

井上先生は、大阪府岸和田市で2013年から学校クラスコンサートを開催しています。ご自身が小学生の頃、音楽の授業でプロの音楽家の演奏を間近で聴いて心が震えた、という原体験が、現在の学校クラスコンサートの開催に繋がっています。これまでに市内11校、のべ3000名に提供してきました。

当日の様子
学校には、音楽が好きな子も嫌いな子もいます。経済状況や、家庭のバックグラウンドも様々です。学校という場でコンサートをひらくことで、どんな子どもたちにも平等に音楽を聴く機会を提供できます。学校クラスコンサートを続けているのは、全ての子どもたちに音楽で何か心に残るものを届けたいという想いからです。また、地元出身の若い演奏家を起用し演奏機会を提供すると同時に、子どもたちの「ちょっと先輩」が音楽で頑張っている姿を見せてあげたい、という狙いもあります。
坂本先生のワークショップ
全体の様子

坂本先生は、音楽ワークショップ・アーティスト団体「おとみっく」代表として、自治体・企業・ホールなどと連携しながら、全国各地で音楽ワークショップイベントを展開しています。参加者とのコミュニケーションを大切に、そして、会場全体が一体となって音楽を作り上げる事を意識しながら、様々な場所で実施しています。

当日の様子
ワークショップでは、楽曲の特徴が分かりやすく伝わることを第一に考え、誰でも気軽に楽しめる内容という事を心がけて制作しています。私たちの演奏を聴くだけでなく、子どもたちが実際に身体を動かしたり楽器を演奏したり、時には簡単な音楽をお友達と協力しながら創作することもあります。音楽に「参加」することで、音楽を介したコミュニケーションが生まれ、人と人との関係が築かれていく。こうした体験を通じて、子どもたちにとって音楽がより身近な存在になっていくんです。

今回の参加者には、アーティストやコーディネーターをはじめ、様々な立場でアウトリーチや学校教育の現場に関わっている方が揃っていました。今ある教育現場の課題も踏まえつつ、民間の音楽指導者団体であるピティナがこれから学校教育にどういったコンテンツが提供できるのか、ディスカッションを行いました。

公共ホール主催者の声

ホールとして地元のアーティストとネットワークをつくって、福祉施設や小学校にアーティストを派遣し演奏会を実施頂く取り組みをしています。学校側からは「生の演奏を聞ける貴重な機会」と好評を頂いており、こうした取組からいずれホールに来場頂く導線をつくることが重要と思っています。

地域コーディネーターの声

地域の演奏家・ピアノの先生が講座やワークショップを行う機会を提供する事はとても重要です。こうした活動は、児童にとって学校の先生以外からの新鮮で多様な学びを得られる機会になりえると感じています。

生涯学習音楽指導員経験者の声

学校により教育目的方針は大きく異なります。学校の授業の中に民間の音楽教育人材がどう介入していくのか、ここが重要なポイントです。今後も、ピティナが音楽教育の場を繋げ、可能性を広げていくことに協力していきたいです。

子どもたちの視野を広げること、音楽をコンテンツとして様々な題材と組み合わせること、民間と公教育の現場が連携していくこと…それぞれの立場から音楽の教育に資する価値を語り合う貴重な時間となりました。

「これからの音楽教育を考える会」は、皆さんとコミュニティを作っていくことを大事な目的として掲げています。今後も様々な知識を持っている方々と意見交換をし、民間の音楽教育が貢献する場が広がり実現していくことを願っています。

川野辺雪菜(認定ファンドレイザー/本部事務局)
顔写真

音楽や芸術で教育に貢献できる方法を模索している方は実はすごくたくさんいます。ただ多くの方が、仲間が見つからない・資金調達に苦戦している・良い事例を知りたくても誰に聞けばいいのかわからない……と悩んでいるので、同じ気持ちで活動する人のコミュニティをつくりたいとずっと思っていました。今回、民間音楽教育人材の大きなネットワークを持つピティナでその第1歩を踏み出せたことがとても嬉しいです。
今後は民間の教育支援団体・資金調達やまちづくりの専門家・学校教育関係者など、様々な立場で教育を支える人を招いて、皆さんと共にこれからの音楽教育の在り方を考えていきたいと思っています。

あなたの街でも ひらけ、ピアノ!

ピティナ会員や支部・ステーションが展開する「ピアノをもっと世の中にひらいていく」企画を公募します。地域で企画を展開している・これから展開を考えている方、その輪を繋いで「一緒にみんなで、ピアノでわくわくしたい!」という方は、ぜひ下記のフォームから企画の詳細をお知らせください。

ご申告いただいた企画の内容を個別におうかがいし、OPEN PIANO PROJECTにふさわしい企画は、ピティナで広報をお手伝いさせていただきます。