第3回 これからの音楽教育を考える会 レポート

2月1日(水)にオンライン(Zoom)で開催された「これからの音楽教育を考える会」第3回のレポートをお送りします。

これからの音楽教育を考える会 第3回
音楽教育は、学校・地域に何ができるか?「地域コミュニティとの関係づくり」
開催日程:2023年2月1日(水)
会場:オンライン
主催:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)Open Piano Project
ゲストスピーカー:横田倫子先生(正会員)/山本安耶香先生(指導会員)
ファシリテーター:川野辺雪菜
テーマ:「地域コミュニティとの関係づくり」
前回の企画

2023年2月1日、「これからの音楽教育を考える会」Vol.3がオンラインで開催され、23名が参加されました。初年度の3回目となる今回は、これまでの参加者に加え、公共ホールや自治体と関わりの深い方々も参加され、市民、自治体、と様々な視点で意見交換されました。地域でそれぞれ一人で考え模索してきたことをアウトプットすることで、同じ思いの人がたくさんいることを実感できた方も多く、人とのつながりの重要性、音楽を通して社会と繋がる必要性が、多様な参加者のなかで、おおいに共感しあえる貴重な機会となりました。

前半には2名のゲストスピーカーが、ご自身の活動についてご紹介くださり、後半はグループに分かれてディスカッションタイムとなり、盛んに議論が交わされました。

故郷に戻り地域づくりの第一歩へ

ゲストスピーカー1人目は、元武蔵野ステーション代表の横田倫子先生。2023年から故郷の福岡県に戻り、地域のための音楽活動や学校クラスコンサートの展開を図るため、まさに地域の教育委員会や市議会議員などへ働きかけ、ネットワーク構築に奔走中の横田先生。2024年度の学校クラスコンサートの開催に向けて、どのような経由でお話を持って行き、どのような反応だったかなど、うまくいった事例、うまくいかなかった事例もあわせて、現在進行中のリアルなお話を伺うことができました。

大学で東京に出てきて以来、地元に帰ることになり、地元で音楽の裾野を拡げる活動をしたいと考えましたが、まず資金の問題にあたりました。お寺やライオンズクラブなどに持ち掛けてうまくいきませんでしたが、教育委員会に相談し、町議会議員の協力も得られるなど進めています。篠永紗也子さんの学校クラスコンサートを見学する機会があり、それに触発され、教育委員会に過去の動画やレポートを送ると驚かれました。音楽の活動を広げる道筋が見えてきたと感じています。

財団・自治体の研修プログラムを通した成長

2人目のゲストスピーカーは、山本安耶香先生。財団・自治体との取り組みをご紹介くださいました。泉佐野市文化振興財団主催の「泉の森フレッシュコンサート」では、オーディション形式で若手アーティストが共演者と財団の方とともに連携してガラコンサートの企画を考える経験もしました。堺市文化振興財団では、若いアーティスト自身の企画力・ビジネススキルを含めて伸ばしていく試みとして「堺市新進アーティストバンク」が設けられており、幼稚園や親子サークル、子ども食堂、小学校などでのコンサートやワークショップのための実践的な研修のプログラムがあります。企画書作成からチラシデザイン、MC講座や立ち位置のトレーニング、経験者からのアドバイスなど実践的な内容の研修を通して、アーティスト自身が自立し社会につながっていくための財団サポートの取り組みが紹介されました。

初めて出身の愛媛を出て大阪に住むことになり、指導をする前に演奏活動の場を探すことからスタートしました。二つの振興財団と関わりをもつことができました。泉の森フレッシュコンサートに出演したり、堺市新進アーティストバンクへの登録等を通じて子どもたちや地域の場所で演奏やワークショップを行いました。子どもたちと地域に根付いたオリジナル校歌をつくったり、地域の作家さんなどと協力したり、最後の報告会では、財団、社協などへ向けて自分でスライドを作りプレゼンを行うなど実践的なプログラムに参加しました。

グループ・ディスカッション

後半のディスカッションでは地域へのアウトリーチの仕方、学校クラスコンサート経験者の話、学校の音楽教育の話、公共ホールのアウトリーチ事業、資金調達の話など、各グループごとに様々な観点が提示されました。

参加者の感想より(抜粋)
  • お二人のスピーカーの先生より具体的なお話が聞けて勉強になり、同じような思いの方が沢山いるんだと実感できました。自治体によってかなり差があるようなので、色々調べてみたいと思います。
  • ゲストスピーカーの先生方のお話は、リアルタイムでのお話で大変参考になりました。各地域によって違いはあるかもしれませんが、まずは自分の足で出向いたり、探していく先生方のアクティブなご様子はとても励みになりました。「とっかかりがつかめない」と悩んでいましたが、まずは一歩ずつ自分で扉を開けていこうと思いました。
  • 教育委員会や市議会などに知り合いがいない、市自体が芸術活動にあまり関心がない場合など、本当の0(ゼロ)の状態からの立ち上げについても、具体的に知りたいと思いました。
  • ディスカッションの時間には、ピアノの先生はもちろん、実際演奏をしたピアニストさんやホールの御関係の方もいらっしゃったり、またピティナの方のお話も大変参考になりました。1人で考えて模索していたことが、皆さんからのさまざまなお考えを聞くことができたことは、とても励みになりました。貴重な時間でした。
  • 地域や自治体によってかなり差があるようなので、色々調べてみたいと思います。

今回は、ピアノ指導者だけに留まらず、アウトリーチ活動を担っている公共ホールやNPO法人の方、ピアニストや事務局として学校クラスコンサートを実際にコーディネイトされてきた方など幅広いバックグラウンドを持った参加者が集いました。

その中では、公共ホールの自主事業としてのアウトリーチ活動と、市民自ら行うアウトリーチ活動の違い、それを手助けする仕組みへの期待も語られた他、資金調達に悩む市民サイドとホール自治体側との意見交換では、片方だけではなく双方が納得しかつ広くメリットを提供できる活動内容であることが重要、といった公益の視点が共有されるなど、立場を越えた理解が進みました。

また、音楽教育でのアニメといった選曲ジャンルへの意見、楽しさだけでない厳しさの匙加減とは?達成感とは?といった音楽教育の本質的な内容まで、今回もディスカッション時間が足りないくらいの白熱した議論が展開されました。

開催後のアンケートでは、全3回を通じてより具体的な内容で話し合いができよう会が育っていったことと同時に、本質までつきつめる議論をもっと詰めていくべきという意見もあるなど、活性化しています。

次回は2023年6月23日の開催予定です。こうした議論の活性化から、民間の音楽教育事業者ができることの可能性を広げていくべく、引き続きたくさんの方の勉強会への参加をお待ちしております。


第1回レポート
第2回レポート

学校クラスコンサート
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