世紀の巨匠を聴く Vol.1~ディヌ・リパッティ ラストリサイタル

天からの贈り物のような突然の閃きでスタートした出演者のいないコンサートシリーズ「世紀の巨匠を聴く」。友人から譲り受けた今は亡き巨匠たちの歴史的遺産とも言えるLPレコードやSPレコードを真面目に聴く会です。

100年ほど前のレコードは、擦り減りプチプチと傷の音が聞こえ、それはまるでやり直しのできない本番に向け日々鍛練し、神経を擦り減らし紡いで来た芸術家の姿のように愛おしく思えました。

ジャケットの写真の鋭い目に惹かれ、私が最初に手にしたのは、ディヌ・リパッティのLPレコードアルバムでした。1917年ルーマニアで生まれ、16才でコルトーに見出され、激動の時代の中、スイス、ジュネーヴに亡命、病弱で闘病生活を送りながらたった33歳という若さで亡くなったという、幻のピアニスト。亡くなる2ヶ月前にブザンソン音楽祭で行なった最後のリサイタルのライブ録音は、私を虜にしました。

よく調べて行くと、彼は、ジュネーヴのシェーヌブールという街に住んでいたらしく、トラムの沿道脇の公園には、胸像も建てられ、墓地もすぐ近くにあると、偶然にも同じ街に住んでいる娘が写真を送ってくれました。またジュネーヴ音楽院には、リパッティと名付けられたサロンもあるそうです。

歴史上の人物ではなく、短くも音楽に人生を捧げ生き抜いた生身の人間として、グッと身近な存在に感じました。そして、その時でした!このシリーズのスタートは、リパッティのラストリサイタルで行こう!!

後半に予定されていたショパンのワルツ全14曲が体調不良のため、最後の1曲を弾けず舞台を降りてしまったことや、でも拍手喝采の中、最後の力を振り絞り、アンコールにバッハを演奏したことなど、エピソードを交えながらお聴き頂きました。(当時の録音事情でアンコールは録音できず、幸い、リサイタル直前のスタジオ録音でのバッハが収録されていたので、それをアンコールとしてお聴き頂きました。誰もが目を閉じ、胸を熱くしながら。)

参加者の皆様には、大好評で、「70年以上も前の演奏録音が、こんなに私たちを感動させてくれるなんて凄い!」、「まるでブザンソン音楽祭に行き、目の前でコンサートを聴いているような感動を覚えた!」など、レコードの向こうにいるピアニストが遠い存在ではなく、生きた音楽として臨場感を感じて頂いたようでした。

ティータイムには、ジュネーヴに因み、リンゴをいっぱい敷き詰めたアップルパイと紅茶でリラックスした中、質問や感想などが飛び交い、和やかで有意義な時間を過ごすことができました。

本日のTea Time
  • アップルタルトパイ(by 京都ブライトンホテル)
  • TAYLORS of HARROGATE「レモン&オレンジ」

ジュネーヴではどこのお店にも並べられているパイです。最高級のブラックティーをベースに爽やかな柑橘類が香る逸品。

最近、誰でもどこでもプライベートな空間で気軽に視聴できるYouTubeなどでは、再生回数を競うように情報が溢れ、どれが本物かどうかも見極めがつき難くなっています。特に未熟な学習者には、その判断ができず真似てしまうことに危機感を感じるほどです。本来、クラシック音楽は、作曲家の意思を踏まえ、その時代背景や様式、精神など、その感動や畏敬の念と共に伝統が継承され、芸術の歴史となって行くものだと思います。今回の企画は、ささやかながら何かしら現代社会に一石が投じられるような有意義な会に発展できれば、と想いを新たにしております。

開催概要
企画名 世紀の巨匠を聴く Vol.1
内容 幻のピアニスト ディヌ・リパッティ Dinu Lipatti ラストリサイタル
日時 2026年4月26日(日)
会場 シェモザー
主催 かつらぎステーション
幻のピアニスト ディヌ・リパッティDinu・Lipatti ラストリサイタル
プログラム
  • J・S・バッハ / パルティータ No.1 変ロ長調
  • モーツァルト / ピアノソナタ No. 8 イ短調 K.310
  • シューベルト / 即興曲 変ト長調 作品90-3
  • シューベルト / 即興曲 変ホ長調 作品90-2
  • ショパン / ワルツ No.5 変イ長調 作品.42
  • ショパン / ワルツ No.6 変ニ長調 作品64 -1
  • ショパン / ワルツ No.9 変イ長調 作品69 -1
  • ショパン / ワルツ No.7 嬰ハ短調 作品64 -2
  • ショパン / ワルツ No.11 変ト長調 作品70 -1
  • ショパン / ワルツ No.10 ロ短調 作品69 -2
  • ショパン / ワルツ No.14 ホ短調 遺作
  • ショパン / ワルツ No.3 イ短調 作品34 -2
  • ショパン / ワルツ No.4 ヘ長調 作品34 -3
  • ショパン / ワルツ No.12 ヘ短調 作品70 -2
  • ショパン / ワルツ No.13 変ニ長調 作品70 -3
  • ショパン / ワルツ No.8 変イ長調 作品64 -3
  • ショパン / ワルツ No.1 変ホ長調 作品18
  • ショパン / ワルツ No.2 変イ長調 作品34 -1

※最後のワルツは体調が悪くなり、舞台を降りた為、録音されていない

EMI LPレコード(1950年9月16日録音)

Report: かつらぎステーション 岡田一美

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