みんなの音楽広場@新宿区立障害者福祉センター

第7弾は、11月22日(火)に都内の障害者福祉施設で開催されたピアノ・サロンのレポートをお送りします。

当日の様子

◆ みんなの音楽広場 ピアノ・サロン
日程:2022年11月22日(火)16:00-17:00
会場:新宿区立障害者福祉センター
主催:田中莉紅さん(ピティナ練馬光が丘ステーションスタッフ)
協力:新宿区立障害者福祉センター

大学のキャンパスや広い公園の緑に囲まれた新宿区立障害者者福祉センター。障がいのある人々の自立を促す就労サポートやリハビリテーションを行うこの施設のラウンジには、1台のアップライトピアノが置かれています。毎月第2・第4火曜日になると、このピアノの周りには続々と施設の利用者や職員が集まってきます。

当日の写真
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ラウンジのピアノで定期的に「みんなの音楽広場」を開催しているのは、国立音楽大学の3年生・田中莉紅さん。大学で音楽療法を学びながら、鎌田裕子先生(ピティナ正会員)の練馬光が丘ステーションで学生スタッフとしても活躍しています。
音楽療法の勉強をするうちに、障がいのある人々に音楽でできることの可能性を感じた田中さんは、2022年7月に同センターに「ボランティア活動をさせてほしい」と飛び込みの営業電話をかけたそうです。ボランティア活動の中で音楽療法のセッションに参加するようになった田中さんに、職員の皆さんが様々な機会を提供してくれるようになり、翌月には「ピアノ・サロン」という形に発展しました。現在は月に2回のペースでサロンを開催しています。

当日の写真
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障がい者は「やりたい」の実現を環境などによって阻まれることが多い、という課題に寄り添い、このサロンでは「リクエストした曲が演奏される」「演奏したければ参加できる」「歌いたければ歌える」といった、一人ひとりの小さな自己実現を大切にしています。サロンが始まるとまず観客に配られるのは、田中さんお手製の「曲目リスト」。毎回30曲近くのレパートリーを準備していき、聞きたい曲に丸をつけて提出してもらいます。この日も、サロンが始まると施設利用者の皆さんが我先にとリクエスト用紙を手にし、田中さんに話しかけに行く温かい光景が見られました。

当日の写真
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サロンは、リクエスト曲の中からどの曲を聴きたいか、田中さんが観客に都度尋ねながら即興的に進んでいきます。誰かが「歌いたい」と立ち上がればその歌を皆で聴き、楽器で参加できる曲があれば打楽器を配り、「もう一度」とアンコールがあれば同じ曲をもう一度。障がいの特性から、じっと座っていられなかったり、話すのが止まらない観客もいますが、このサロンではそうした行動を制限することはありません。観客の皆さんは、すべて笑顔で受け止めてピアノを弾き続けてくれる田中さんが大好きなようです。

当日の写真
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一青窈の「ハナミズキ」を前に立って歌ってくれた方は、田中さんのコンサートが始まってからしばらくして、自ら「一緒に歌いたい」と申し出てくれたそう。コンサート中に田中さんが楽譜を探すのを手伝ったり片付けをしたりと、自主的に田中さんをサポートしてくれます。クラシック音楽が好きな車椅子の女性は田中さんのコンサートを毎回とても楽しみにしており、この日は「次は聴きたいクラシック曲でプログラムを組み立ててきますね」と張り切って帰って行きました。

当日の写真
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施設の主任相談支援専門員・塩川恵子さんは、こうした施設利用者の変化を田中さんのコンサートが作ってくれた「くつろぐ時間」のおかげだと感じています。

このセンターは、多くの利用者が働きに来ている施設です。仕事中は真面目に黙々と作業をし、仕事が終わったら16:00にまっすぐ家に帰る、という生活が基本なので、仕事や学校の帰りに友達や同僚と遊んだり何気ないおしゃべりをしたり、といった時間がほとんどありません。田中さんのピアノ・サロンがこの日常に「くつろぐ時間」をつくってくれてから、皆にコミュニケーションの機会が増えたように感じます。
新宿区は、障がい者の文化的な活動への参画のサポートや、街中に音楽や芸術でインクルーシブな居場所をつくっていくことに前向きな自治体です。田中さんの熱意ある行動を受け、私たちも自治体や企業と連携して、障がい者の居場所が施設内だけでなくなるような努力をしていきたいと考え、区や社会福祉協議会などに意見を挙げています。

当日の写真
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サロン終了後には、施設の他の事業所の人たちが、施設の「新年度の集い」での演奏について田中さんに相談しに来ました。立ち会った鎌田裕子先生も、田中さんの活動に刺激を受け、塩川さんと障がい者の音楽活動への参画について意見を交わし、ステーションの拠点である練馬区でも今後何かインクルーシブな活動ができないかと構想を練っています。
「障がい者の居場所を音楽で広げていきたい」という学生の熱い想いが、様々な立場の人に影響を与えているピアノ・サロン。今後、施設内にとどまらない企画に発展していく可能性も感じられるプロジェクトでした。

当日の写真
田中 莉紅さん(練馬光が丘ステーションスタッフ)
顔写真

みんなの音楽広場"ピアノ・サロン"はそこにいる全ての人が尊重され、共に音楽のある空間を自然体で楽しむことができることを目指しております。私自身、沢山の方々に支えられ、音楽を通して人と繋がれる喜びを改めて感じさせていただいています。まだまだ始まったばかりの"ピアノ・サロン"です。皆様の心安らげるひとつの居場所になれば、と一音一音に心を込めて演奏致します。

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